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ガウスの法則を、道具にする ── 対称性で、場を一発で出す

2026.06.24

場を知るのに、源を一つずつ足すのは骨が折れる。でも電荷に対称性があれば、閉じた面で囲って数えるだけで、場が一発で出る。点・線・面 ── ガウス面を対称性に合わせて選ぶコツを、点電荷・帯電した線・無限平面・コンデンサで手を動かして掴む。

▶ 対称性とガウス面のラボを全画面で開く

② 電位 で、場の上を歩けば電位が出ると分かった ── V=EdlV = \int \vec E\cdot d\vec l。でも、これには前もって E\vec E そのもの が要る。歩く地図がなければ、歩けない。

その E\vec E を、いまはどう出していたか。① クーロンの法則 で源ひとつの 1/r21/r^2 を覚えて、源がいくつもあればその矢印を足す(重ね合わせ)。これは正しいけれど、骨が折れる。源が点ならいい。でも、電荷が金属の棒のように線に沿って連続に乗っていたり、平らな板いっぱいに塗り広げられていたら、足すべき源は無限個 ── 各点で無限本の矢印を cos/sin\cos/\sin で分解して足す、なんてやっていられない。

もっと楽な道はないか。── ある。電荷の並び方に 対称性 があるときに限って、源を一個も足さずに、場が一発で出る。今日はその道具を、手に馴染ませる。

道具の正体 ── 囲んで、数える

使う道具は、⑥ 発散とガウスの法則 で「なぜ成り立つか」までやった、あの法則だ。ここでは中身の証明は⑥に預けて、使い方 に集中する。形だけ思い出しておこう:

EdA=Qε0\oint \vec E\cdot d\vec A = \frac{Q_{\text{中}}}{\varepsilon_0}

言葉に直すと一文。どんな形でもいいから閉じた面で囲って、その面を貫いて外へ出ていく電場(フラックス)を数えると、中に入っている電荷の総量(を ε0\varepsilon_0 で割ったもの)に等しい。 左辺の EdA\oint \vec E\cdot d\vec A は「閉じた面ぜんぶで、貫く分を足す」という印 ── ⑥でフラックスとして触ったやつだ。右辺は「囲んだ中の電荷」。面の形には一切よらず、中身だけで決まる。

ここで、ちょっと不思議に思ってほしい。左辺には知りたい E\vec E が入っているのに、右辺は「中の電荷」というすでに知っている量だ。ということは、この等式を E\vec E について解けば、場が出るのでは? ── 半分は当たり。でも左辺は積分(足し算)だから、ふつうは E\vec E をくくり出せない。くくり出せるための、たった一つの条件 ── それが 対称性 だ。

手品のタネは、面の選び方

ガウスの法則そのものは、どんな閉じた面でも成り立つ。でも場を 出す 道具として使えるのは、面をうまく選んだときだけだ。狙いはこう:

その面の上で、E\vec E の大きさが一定になり、しかも面に対して垂直(または平行)になるように、囲む面を選ぶ。

そういう面が選べると、左辺の足し算が、ただの掛け算につぶれる。E\vec E が面に垂直で大きさ EE で一定なら、EdA\oint \vec E\cdot d\vec AE×(その面の面積)E \times (\text{その面の面積}) になるからだ(面に平行な所は貫かないので 00、垂直な所だけが効く)。すると:

E×(面積)=Qε0E=Qε0×(面積)E \times (\text{面積}) = \frac{Q_{\text{中}}}{\varepsilon_0} \quad\Longrightarrow\quad E = \frac{Q_{\text{中}}}{\varepsilon_0 \times (\text{面積})}

積分が消えて、割り算ひとつで EE が出た。── これが道具の三段だ。

肝心なのは、面(ガウス面)を電荷の対称性に合わせて選ぶ こと。点には球、線には円柱、面には箱 ── この対応さえ手に入れば、あとは面積を書くだけだ。順にやってみよう。

点 → 球 線 → 円柱 面 → 箱
ガウス面は、電荷の対称性に合わせて選ぶ。点電荷なら球、無限に長い線なら円柱、無限に広い面なら箱(その面でだけ $E$ が一定&垂直になる)。選び方さえ合えば、あとは「面積で割る」だけ。

点電荷 ── 球で囲うと、クーロンが戻ってくる

まず点電荷 QQ。場は中心から放射状に、どの向きにも同じ強さで出ているはずだ(向きを区別する理由がどこにもないから ── これが対称性だ)。なら、囲む面は 中心 QQ をくるむ半径 rr の球 が素直だ。球の上ではどこでも E\vec E は外向き垂直、大きさは同じ EE

球の表面積は 4πr24\pi r^2 だから、フラックスは E×4πr2E \times 4\pi r^2。これが中の電荷 QQε0\varepsilon_0 で割ったものに等しい:

E×4πr2=Qε0E=Q4πε0r2E \times 4\pi r^2 = \frac{Q}{\varepsilon_0} \quad\Longrightarrow\quad E = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2}

見覚えがあるよね。── これは①のクーロンの法則 E=Q4πε0r2E = \dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2} そのものだ。出発点だったクーロンが、ガウスから 戻ってきた。①で「1/4πε01/4\pi\varepsilon_04π4\pi は、球の表面積の 4π4\pi と後で打ち消し合う」と予告しておいたのは、これのことだった ── いまちょうど、4πr24\pi r^24π4\pi と相殺している。点電荷では、ガウスはクーロンと同じ答えを返す“確かめ算”になっている。本領は、次の二つだ。

無限に長い線 ── 円柱で囲う

こんどは、電荷が細い棒に沿って一様に乗っている(線電荷)。1メートルあたりの電荷を λ\lambda(線電荷密度)とする。棒のまわりの対称性は、点とは違う ── 棒からの距離 rr が同じなら、場は同じ強さで、棒に対して 真横(放射状) を向く。棒に沿ってどこへずれても景色は変わらない。

この対称性に合う面は、棒を芯にした半径 rr・長さ LL の円柱 だ。円柱の 側面 では E\vec E は外向き垂直で一定。上下のふた では E\vec E は面と平行(横向き)に通り抜けるだけなので、貫かない=フラックス 00。だから効くのは側面だけ。側面の面積は 2πr×L2\pi r \times L(円周 × 長さ):

E×2πrL=λLε0E=λ2πε0rE \times 2\pi r L = \frac{\lambda L}{\varepsilon_0} \quad\Longrightarrow\quad E = \frac{\lambda}{2\pi\varepsilon_0 r}

両辺の LL が消えるのが気持ちいい(場は棒の長さの取り方によらない ── 無限に長い、の意味だ)。点電荷では 1/r21/r^2 だったのに、線では 1/r1/r。薄まり方が一段ゆるい。理由も対称性にある:点は球面(r2\propto r^2)に薄まるのに、線は円柱の側面(r\propto r)にしか薄まらないから、一つ分ゆるくなる。

無限に広い面 ── 箱で囲うと、距離によらない

最後に、電荷が広い板いっぱいに一様に塗られている(面電荷)。1平方メートルあたりの電荷を σ\sigma(面電荷密度)とする。対称性はさらに違って、場は板に 垂直 に、両側へまっすぐ出る。板に平行にどこへずれても、板に近づいても遠ざかっても(無限に広いので)、強さは変わらないはずだ。

合う面は、板をまたぐ箱(板の表と裏に面積 AA のふたを持つ、薄い箱)。箱の 表と裏のふた では E\vec E が垂直に出ていく ── 効く面積は両側で 2A2A箱の側面(板に垂直な壁)では E\vec E は面と平行に走るだけで貫かない=00。箱の中の電荷は σA\sigma A

E×2A=σAε0E=σ2ε0E \times 2A = \frac{\sigma A}{\varepsilon_0} \quad\Longrightarrow\quad E = \frac{\sigma}{2\varepsilon_0}

AA が消えて、残った EE には rr が入っていない。── 無限に広い板の場は、離れても弱くならない。点や線の感覚だと意外だけど、これも薄まりの話で読める:点は球面に、線は円柱面に薄まったが、無限平面は「広がる先」がない(どこまで行っても同じ無限平面が目の前にある)から、薄まりようがないんだ。

コンデンサ ── 板を2枚、重ねて足す

板を1枚やったら、応用はすぐそこだ。コンデンサ=向かい合う2枚の板に、+σ+\sigmaσ-\sigma を持たせたもの。場は、2枚それぞれが作る σ2ε0\dfrac{\sigma}{2\varepsilon_0}重ね合わせる(①の足し算)だけで出る。

+σ −σ あいだ:足されて E=σ/ε₀ 外:E=0 外:E=0
コンデンサは、2枚の無限平面の重ね合わせ。あいだでは2つの場が同じ向きにそろって2倍(σ/ε₀)、外では逆向きで打ち消してゼロ。中だけに、一様な場を閉じ込められる ── これが「電気を溜める」入れ物の正体だ。

あいだに 一様な場 だけを閉じ込め、外には漏らさない ── これが電気を溜める入れ物、コンデンサの素の姿だ。一様だから、あいだの電位差(電圧)も素直に出る。場が一定 EE、板の間隔が dd なら、②の歩いて足す V=EdlV=\int E\,dl は、ただの掛け算 V=Ed=σε0dV = E\,d = \dfrac{\sigma}{\varepsilon_0}d になる。場を出す道具(ガウス)と、場を歩く道具(②の電位)が、ここで噛み合う。

②へ、つなぐ ── 場を出して、歩く

最後に、今日の道具を②と結んでおく。②で「歩く地図が要る」と言ったのは、まさにこの E\vec E のことだった。ガウスで場を出して、②で歩けば、電位が出る。

点電荷で確かめよう。ガウスで E=Q4πε0r2E = \dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2} を出し、これを②の流儀で無限遠から足し上げる:

V(r)=rQ4πε0r2dr=Q4πε0rV(r) = \int_r^{\infty} \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r'^2}\,dr' = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r}

②で出した点電荷の電位 V=Q4πε0rV = \dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r} が、ちゃんと戻ってくる。ガウスで EE を出す → ②で歩いて VV にする ── この二段が、電場まわりの計算のいちばん使う型だ。線電荷でも面でも、同じ二段で電位まで出せる(線なら VVlog\log 型、平板なら一次関数)。

下のラボで、対称性とガウス面の対応を手で掴んでほしい。点・線・面を切り替えると、それに合うガウス面(球・円柱・箱)が立ち上がり、面積で割るだけで場が出る ── その「面の選び方で積分が消える」瞬間を、目で追えるようにした。

ガウスがこんなに楽なのは、対称性という特別な贈り物があったからだ。電荷がいびつに散らばっていたら、この手は使えず、また源を一つずつ足す世界(④ 源を足して、場を作る)へ戻る。けれど、対称性さえあれば、囲んで数えるだけで場が落ちてくる ── ①が挙げた電磁気の“5つの芯”の、その1番目を、これで道具として手にしたことになる。